2018年4月1日の大阪市営地下鉄民営化から3年を過ぎました。
大阪市民を始めとする多くの人々が反対した公共交通の民営化ですが、3年を経て車内で次世代交通インフラ(MaaS)の中刷り広告が飾る大阪市地下鉄は、そうした美名とは裏腹に市民の安全・安心が懸念されるほどに2025年にかけて大きく変わろうとしています。
大阪市高速電気軌道株式会社(以下、大阪メトロ)は、社員の2割に相当する944名を削減するという「業務効率化計画(案)」を策定しました。これでは、「駅関係は、改札と駅長室業務を兼務化する。利用客の少ない時間帯の改札の窓口要員を無くす。また、可動式ホーム柵設置によりホーム要員を無くす。利用者の対応は、インターホンと監視カメラによって行う。直接の対応が必要になれば駅長室にいる社員が対応する。運転関係では、可動式ホーム柵設置により車掌を廃止し、ワンマン化を進める。電気、車両、保線関係では、保守拠点や検査業務の見直しを進める。本社・管理部門では、グループ会社である『大阪メトロサービス』に業務を委託する。」とするものです。
計画が実施されると、車椅子利用者や視覚障がい者などの交通弱者を始めとする多くの市民に影響を与えることはあきらかですが、大阪メトロはこの計画を市民に公表していません。この度、この問題を社会的に訴える表記シンポジウムを開催します。
皆様のご参加をお願いいたします。
⚫ 日時:
2021年9月12日(日) 13時30分~16時30分
⚫ 会場:PLP会館
JR天満駅、地下鉄堺筋線扇町駅から徒歩5分
⚫ 内容
① 基調報告
② 大阪メトロの労働者、市民によるシンポジウム
連絡先:
河野英司(090-4766-1226)
三ツ林安治(090-8382-9487)
大阪メトロ 地下鉄運転士は訴える!
2021年7月
大阪メトロユニオン 河野英司、山川俊明
2013年、当時の橋下市長が提案した大阪市交通局の民営化基本方針案には、市バス(132 路線)のうちコミュニティ系バスである赤バスの 26 路線の廃止や一般バス 17 路線の削減で 89 路線に集約し、その上で民間会社に売却し 2014年4月から民間運行を開始すること、地下鉄は2015年度から民営化し、株式会社にするというすさまじい工程表が描かれました。
とりわけ、公営地下鉄の民営化は全国でも異例でした。大阪市営地下鉄は 1933年の御堂筋線開通以来、税金や利用料で築き上げてきた巨大な市民の財産です。それは、公共の福利増進に徹する公益事業として出発し、営利目的ではなく、都市計画事業の一環としてバランスのとれた街づくりに寄与してきました。
地下鉄事業は、2008年度からは赤字の市バスを支援し、市民の足を守ってきました。2010年度には公営地下鉄としては全国で初めて累積欠損金を解消し、2011年度は市バスに 30億円の支援をした上で167億円もの黒字を生み出す優良事業となりました。
「民営化で税金を使う組織から納める組織へ」という、当時民営化のために意図的に展開された宣伝も地下鉄が一般会計に貢献しようと思えば、民営化して税金を納めなくても、地方公営企業法 18条2項の条文通り利益の状況に応じて納付金を納付すればいいだけだったのです。
ところが、民営化を掲げてきた橋下元市長は「地下鉄の自然な姿といえば市場原理によるもの」と発言し続けました。この際には「ホーム柵の増設は経営判断の中で考えられるようなもの」と述べていたのです。
当時の橋下市長が民営化にこだわった背景には関西財界の要望がありました。関西経済同友会は2006年以降、市交通局の完全民営化を求めて提言を重ねてきました。2006年の提言をまとめ、地下鉄民営化の旗振り役を務めたのが、当時の大阪商工会議所会頭・佐藤茂夫京阪電鉄相談役でした。そして、橋下元市長は 2012年、京阪の子会社・京福電鉄の藤本昌信副社長を交通局長に登用したのです。
地下鉄事業の資産の合計は少なくみても1兆3000億円と言われており、この一連の動きに表れていたのはその利権をめぐる構図そのものでした。そして、民営化の前提として、「800人もの職員の削減などで150億円を浮かせる」ことが言われてきました。
太い動脈として黒字を生み出す地下鉄と、きめ細かく必要なところに走らせる市バスが市営で一体運営されてこそ市民の足を守ることができるのです。
このことから、私たちは黒字であった地下鉄をさらに改善できる条件が広がっていたにもかかわらず、あの当時民営化する必要があったのかと今でも疑問に思っています。
今回の社員の2割を削減する「業務効率化計画」は、絶対阻止しなければなりません。車掌がなくなり運転士1人だけのワンマン化になると、地震などの災害や事故の場合、地下トンネルの中で乗客の安全を確保することが困難になることが明らかです。
市民の安全、安心を守るために、ぜひ、一緒に闘ってください。
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